教室紹介

医局員の国内臨床研修

医局員の国内研修 

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静岡県立こども病院体験記

三井 一葉

2011年7月~2012年6月までの1年間、静岡県立こども病院で研修する機会を与えて頂きました。

静岡県立こども病院は静岡駅から車で20分程度の場所に位置する小児病院です。静岡県の場所柄か、スタッフは標準語の方以外にも、関西弁や他の方言の方も多く、様々な地域から病院スタッフが集まっていることが分かります。私が研修していた時は、麻酔科スタッフ計11名に他科からの研修の医師が1~2名という体制でした。このメンバーで外科各科(眼科、耳鼻咽喉科以外)の手術、心臓カテーテル検査、帝王切開、またCTやMRI検査などの画像検査時の麻酔を担当していました。

静岡県立こども病院での研修の最大の特徴は他施設では経験することのできない特殊な症例や麻酔が存在すること、そして、それに見学ではなく主麻酔科医として携わる機会を積極的に与えてもらえるということです。研修に来た当初は、名前は聞いたことがあるが詳細を知らない疾患や名前も聞いたことのない手術法ばかりで、毎日、他のスタッフを頼ったり、文献で調べたりしていました。それらに、徐々に慣れてくると他のスタッフの担当症例にも、ディスカッションの際に意見が言えるようになりました。特殊な症例の際、自分で考えた麻酔計画がカンファレンスでそのまま通るようになると自信がついたのを覚えています。
また、学会活動に積極的に参加する機会を与えてもらえることも魅力の一つです。1年間だけの研修でしたが、小児麻酔学会や小児外科シンポジウムでの発表の機会がありました。世界初となる手術成功例の報告をさせてもらえた際には静岡県立こども病院のレベルの高さを感じました。

さらに、静岡という土地と科同士の垣根の低さも魅力でした。休日もしっかり与えてもらえるので県内の名所に行ったり、他科のスタッフと酒を飲みに行ったりとプライベートも充実していました。
静岡県立こども病院の研修で学んだ小児麻酔の実際、他科と交流することの大切さなど、今でも働くうえでとても役に立っています。是非、多くの人に経験してもらいたいです。

三井一葉先生

 

 

ペインクリニック研修:順天堂大学病院

猪野 博史

平成23年4月から1年間の予定で、順天堂医院にてペインクリニックの研修をしています。3ヶ月経った7月現在の研修の様子を紹介します。

  • 順天堂医院ペインクリニックでは常勤医4名と非常勤医数名で入院患者と外来患者を診療しています。スタッフはみな親しみやすい人柄で、とても楽しく研修の日々を送っています。
  • 入院患者の多くは帯状疱疹・脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニアなどの疼痛に対し、持続硬膜外ブロック・交感神経ブロック・神経根ブロック・脊髄刺激療法などを行っています。
  • 上級医と2人1組で1~2人の患者を受け持ちますので、困ったことは気軽に相談でき、経験豊富な上級医の考え方からは多くのことが学べます。
  • 外来では、まず診察担当医が患者さんを診察し、治療方針を立てます。それにそった処置を実際に施す係が今の私の主な仕事です。1日におよそ10~20人の患者さんを担当します。
  • 最初はほとんど経験のなかった処置も、徐々に経験を重ねていき下記の通りレパートリーが増えてきました。
  • トリガーポイント注射、点滴、硬膜外ブロック、星状神経節ブロック、後頭神経ブロック、眼窩上神経ブロック、耳介側頭神経ブロック、腕神経叢ブロック、肩関節注射、肩甲上神経ブロック、傍脊椎神経ブロック、仙腸関節ブロック、仙骨硬膜外ブロック、膝関節注射、神経根ブロック、腰部交感神経節ブロック
  • 今後も経験を積み重ね、ブロックの手技を磨いてくと共に、上級医の診察技術も学び、いずれは診断・治療方針が自分で立てられるよう努力していきます。

1列目、左から2番目が猪野博史

緩和ケア研修:大阪大学・淀川キリスト教病院

熊倉 康友

卒後6年目の熊倉康友と申します。突然ですが、皆さんは緩和医療・緩和ケアという分野を御存知でしょうか?
知っている方もおられると思いますが、平たく言うと、「がんで苦しんでいる患者さんに少しでも楽に過ごしてもらえるようサポートする」医療・ケアになります。がんの治療も日々進歩してきており、“がんは治る病気”という言葉もちらほら見受けられますが、それでも今の日本での死因の第一位は未だにがん(悪性新生物)であり、日本人の2人に1人は癌になると言われています。ですから、がんという病気は身近な病気であり、それだけに苦しむ患者さんも多く存在します。そのような方々に少しでも苦しみを和らげ、よりよい人生を送ってもらうこと、それが緩和ケアの役割です。
この緩和ケアというのは、現在はがんと診断された時からすでに必要であると考えられております。病気が進むに従い、痛みや倦怠感など様々な症状が出現してきます。それに伴って緩和ケアの必要性が高まり、治療が難しい状態となると、症状を和らげる緩和ケアを中心とした治療が必要となります。

私は2年間の初期研修を山梨大学で行った後、麻酔科に入局しました。2年間の研修を行った後、緩和ケアを本格的に学ぶ為に日本緩和医療学会現理事長である恒藤暁先生のご厚意により、大阪大学での一年間の研修を行いました。現在は同じく大阪にある淀川キリスト教病院にてホスピスの研修を行っております。
大阪大学では緩和ケアチームという一般の病院内で痛みなどの苦痛症状を和らげる為に、主治医と協力しながら薬剤の調整などをサポートするといった仕事を行っていました。前に述べた通り、治療早期から関わりを持ち、身体症状だけではなく他の様々な問題に対してもアドバイスしていくことで、患者さんを中心としたチームとしての医療を行ってきました。また、恒藤教授や他の先生方と共に海外の緩和医療関係の学会などにも参加したり、臨床現場での研究の方法など様々なことを教えて頂きました。多くの緩和医療に携わる先生方との出会いもあり、山梨大学だけでは得られなかった色々な経験もさせて頂きました。

ヨーロッパ緩和ケア学会での写真

ヨーロッパ緩和ケア学会(European association of Palliative care:EAPC)での写真

大阪大学医学部緩和ケアチーム

大阪大学医学部緩和ケアチーム(上段の向かって左から2番目が熊倉医師)

大阪大学での一年間の研修の後、日本において2番目に早く作られた(緩和ケアの活動としては日本では最も早く導入された)ホスピスのある淀川キリスト教病院へ研修に来ています。ここでは、自分が主治医となり、病棟の看護師やソーシャルワーカーなどと一体となって患者さんを支えていくチーム医療を行っています。多くの患者さんの旅立ちを支えながら、自分の中での葛藤と闘いながら診療を行う毎日を過ごしております。
緩和ケアにおいては“痛み”の緩和は重要な治療です。人は痛いときには何も考えられなくなり、まず痛みをしっかり取ることで他の苦痛な症状を見つけ、良くしていくことが可能になります。痛みの治療ということについては、麻薬系鎮痛薬の使い方などの麻酔科にとってなじみ深い知識が重要です。もちろん、それ以外の膨大な知識が必要となりますが、麻酔科医としての知識は自分にとっての財産であり続けると思っています。
緩和医療に興味のある学生・研修医の皆様、どうやって勉強していいか分からず悩んでおられる方がいらっしゃいましたら、是非とも麻酔科へどうぞ!まだまだ未熟な私ですが、一緒に考えていければいいなと思っています。

2010年度PTEeXAM受験記

古藤田 眞和

NBE(米国心臓超音波専門医認定委員会)が主催する心臓超音波専門医試験にはASCeXAM(経胸壁)とPTEeXAM(経食道)の2種類があり、麻酔科医が手術中使用する頻度の高い経食道心エコーの試験を受験してきました。
試験は年1回で、以前はアメリカのひとつの都市で開催されていましたが、2009年度から、アメリカ・カナダの各都市にあるPrometric centerという試験会場にて受験が可能になりました。
日本からだとハワイが最寄の会場になり、幸いにもハワイの会場の予約が取れたため、11月にハワイで受験することになりました。
会場はホノルル中心部からだいぶ離れた郊外のオフィスモール内にあり、完全個人ブースに監視カメラが付いた状況で試験を受けます。17:30から始まり約5時間、あいだに休憩は計10分程度という過酷なスケジュールでした。エアコンがガンガンに効いており途中腹痛に見舞われながらもなんとか計200問の問題を解き終え、22:30頃会場を出ました。
高速の脇で、ちゃんと来るのかどうか怪しい帰りのバスを待ち、24:00頃ホテルに帰宅。時差ぼけもありかなり疲れましたが気分は晴れ晴れです☆
一人旅でしたが、せっかくなので翌日はWaikikiでちょっと泳いで帰国しました。
この労力と経費(受験費用はびっくりするほど高い)は2回目はない!という願いが通じたのか、無事合格することができました。貴重な経験になりました。日々の診療に還元したいと思います。

PTEeXAM

静岡県立こども病院での1年間の勤務を終えて

古藤田 眞和

2010年7月から1年間、静岡県立こども病院で勤務させていただきました。
静岡県立こども病院は静岡唯一の小児病院で、静岡駅から少し離れた240床ほどの病院です。年間総麻酔件数は2671件、外科830、心臓外科300、脳外科280、形成外科370、泌尿器科210、整形外科190、産科160、心臓カテーテル230、他100で、そのうち日帰り麻酔が720件でした。年齢では新生児症例(1ヵ月未満)が129件、乳児症例(1ヶ月以上1才未満)が497件、幼児症例(1才以上3才未満)が521件でした。
心臓疾患・超低体重出生児の症例に限らず、各科においても初めて目にする疾患や手術が多く、こども病院でしか経験できない症例が多くあることを実感しました。
静岡こども病院には科長の堀本洋先生を筆頭に計10名の麻酔科医が勤務しており、自分も含め全国各地からこども病院に来ており、いろいろな病院や医局の話、考え方などを聞くことができ、毎日のディスカッションも含め非常に勉強になりました。またその他に小児科医や後期研修医が3か月ほどの期間で各クール1-2名研修に来ており、人数の面でも充実していました。一人が担当する症例は一日あたり1-2例であり、各症例に関して十分検討・反省することができてよかったです。また比較的時間にゆとりがあることで、珍しい症例や管理が困難な症例など、みんなで情報を共有することができて有意義でした。
静岡こども病院は全体的にとてもあたたかい雰囲気であり、科を超えてスタッフのつながりも多く、毎日気持ちよく仕事ができました。
週末や夏休みなどは、近くの海や観光名所なども巡ることができ、仕事以外の面でも充実した1年間になりました。
1年間で学びきれないことも多々ありますが、貴重な経験を今後に最大限生かしたいと思います。